羽生野亜「木と時の対話」
2.21㊎ 2.22㊏ 2.23㊐ /
2.28㊎ 3.1㊏ 3.2㊐ 12:00 - 17:00
羽生野亜さん在廊日: 2.22㊏
「ますます木との対話になってきました」穏やかに語る羽生野亜さんは、木工を始めてからもうすぐ30年。プロダクトデザイナーからの転身で、一人で作る、一人だからできる仕事に憧れて木工家になったそうです。
「毎朝、木に会いに行く。以前は工芸とかデザインとか、そういう背景を考えたりもしましたが、今はあんまり考えなくなって。単純に木を削る。作業場で木と向き合って一日が終わる。それがいまだに楽しいんです」
羽生さんの仕事は、木との対話から始まり、削りながら少しずつ見えてきたものが、やがてその木だけの佇まいを生み出します。一人で作り続けることで向き合ってきた経験や技術が、素材の秘めるものをとらえて唯一無二の姿にたどり着くのです。
ある器を指して、樹齢はどのくらいかと尋ねると「150年くらいかな」と。ずっと木を見続けている羽生さんには、長い年月の中で木に刻まれた複雑なものや些細なものも見えているようです。
「木というのは、時間を閉じ込めているというか。枝や節の跡、木目をはじめ、木がこれまでに過ごしてきた時間は痕跡としてそこにあって、そういうものと対話しながら作ります。そうやって作ったものを使っていくんですが、ちょっとした変化も木は出やすいですよね。反ったり、シミがついたり…。初めのうちはシミがつくと、ちょっと汚れちゃったなって思うかもしれませんが、長く使い続けていくうちに、だんだんとシミは景色みたいに育ってきます。そういう木と時間の描く面白さみたいなものを楽しんでもらうのもいいなと思うようになりました」
それは羽生さん自身、自作のテーブルを20年ほど自宅で使い続けてきて思うことでもあります。(ウェブサイトpanoramaの記事と動画はこちら)
その経験もあって、最近は木の変化を受け入れるような薄く塗装したものも作っています。今展でも木と人の距離がさらに近づくような仕上げの作品が並びます。
手で撫でたくなるような木の肌合い、小さな手道具で彫った細やかな表情、木と時の対話から生まれる佇まいをぜひご覧下さい。
「道具を作る、という制約の中で物作りをするのが自分には向いているので、手元にある材料を見て、たまたま目に留まった木で、さて何を作ろうかって考える進め方なんです。だけど、材料によっては割れがひどくて、これは道具にならないなというものもあります。それでも、何か削りたいっていう衝動はあるんですね。そこで少しずつ削ってみて、一旦手を止めて、また少し削ってという作業を繰り返して完成したのが、壁掛けの作品(
作品1 / 作品2 / 作品3 / 作品4 / )です。彫刻ですね。今は自分の技術の引き出しが増えてきたので、割れのある木にも手を出せるようになったんです。でも、時間はかかります。ちょっと削ってはわからなくなって、しばらく側に置いて毎日ちらっと見ながら考えて、次が見えたらまた削るという感じです。一つ作るのに数ヶ月かかることもあって、余裕がないと作れません(笑)。
この壁掛けと同様、なかなか数を作れないのが、今回出展する“穴の空いている”木の器です。何ができるかわからない、手探りの状態で作り始めるのですが、節の周りは虫喰いも多くて、途中でこれ以上削れない、完成に至らないこともあります。天然のものを相手にどう削るか、というのは面白い反面、ずっと頭で考えるからとても疲れたり、時間がかかったりします。
穴の周りに厚みの高低差があるのも特徴ですので、じっくり眺めてみてください。
それから、薄い木が反ったような形状の「反り器」は今回が初出展となります。反っていますが、曲げ木ではなく、厚さ6~7センチの木を両側から彫り出したものです。原始的な形というか、まだ木を曲げる技術がないような大昔からあったかもしれない、木の塊からただ削っただけの単純な形。
昔の技術で作られたものの良さってありますよね。そういう雰囲気のものを作りたいって前から思っていたんです。どんなふうに使うかは、使う人に委ねて、自由に使ってもらえたらと思います」
‒羽生野亜
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